旅ログ

ロードバイクはまるで賽の石を積むが如く〜箱根山周遊ライドで思ったこと〜

様々なクライムコースが存在するロードバイクの名エリア「箱根」で、箱根山を周遊する、一泊二日のロードバイク旅に行ってきた。そこで分かったのは「箱根へ向かう道」よりも「箱根を周回する道」のほうが圧倒的に楽しいということ。同時に、箱根ならではのカルデラが作り出す激しい地形は、かなりハードで、まさに苦行のよう。そんな箱根ロードバイク旅の記録。

  1. ロードバイクは賽の河原で石を積むが如く
  2. 今回のロードバイク旅の概要
  3. 自転車車載キャリアで箱根へ
  4. 本格的なライドの前に「箱根神社」に参拝
  5. 箱根駅伝スタート&ゴール地点から登りが始まる
  6. 意外とロードバイクは少なかった大観山頂上
  7. 2つ目の目的地「大涌谷」へ再度クライム
  8. サイクルウェアがいつも以上に浮いてしまう大涌谷
  9. それでもやはり、あえて言おう
  10. 《おまけ》高級ホテルで休息&翌日に駒ケ岳山頂へ
  11. 》箱根のエリアガイドページはコチラ

1.ロードバイクは賽の河原で石を積むが如く

「賽の河原」という有名な話がある。親より先に亡くなってしまった子供が行くとされる、“三途の川の河原”。子供はそこで、徳を得るために石で塔を積み上げるが、積んだ先から鬼に崩されてしまう。しかし、そこに地蔵菩薩が現れ、子供を救ってくれる。そんな民間信仰の話だ。

ロードバイクに乗るということは、この「賽の河原」によく似ている。特に山岳エリアを走る時は特にそうだ。苦しい思いをしながら、坂道を登り、登りきったかと思えば、またすぐに次の坂道が現れる。正直に話すと坂道を登る時は、毎回「何故こんなことをしているんだろう」と自問自答しながら登っている。まさに、終わりのない苦行を強いられているようだ。

では、なぜ苦しい思いをしながらも、ロードバイクに乗る(もしくは山を登る)のか。そこに「救い」はあるのか。そんな鬱々としたことを、考えながら、今回の箱根を走った。

2.今回のロードバイク旅の概要

今回のロードバイク旅では、箱根の魅力をできるだけ楽しむために、車で箱根まで行き、「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」を拠点とする一泊二日の旅をプランニング。大観山、大涌谷の2つの頂上を目的地とする、獲得標高1221mの周回ライドだ。振り返ってみれば、我ながら、何故こんなプランニングをしたのか甚だ疑問だ。参加は「bara」「ごっさん」そしてこの僕「モリスン」の三名。

そういえば、編集部メンバーからは「モリスン、これいけるの?」と言われていた…。その時は「箱根の名所を1日で効率よく回るプラン」づくりに専念するあまり、実走した際のイメージは湧いていなかったのだろう。距離も50km満たないし、1200m程度なら「風張峠をちょっと長くした程度っしょ」と数字上で見て簡単に見ていた。自分は風張峠でも結構ヒーヒー言いながら走っているのに…。

そんな、ロードバイク旅のプランニングがこちら。

48.1km
走行距離
3h12m
想定所用時間
1221m
獲得標高
426m
最大標高差
5.8%
上り平均斜度

「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」を拠点に、「箱根神社」で、ライドの無事を祈願し、「大観山」クライム&ダウンヒル。国道1号線を通り、箱根山をぐるっと左回りにまわって「大涌谷」へ。 その後、仙石原へ寄ってホテルに戻る、というコース(正確には諸事情により仙石原は行けず)。普段から走り込んでいる方なら、意外と簡単に回れてしまうはず。箱根の魅力を存分に堪能できる、我ながら良いコースだと思う。

3.自転車車載キャリアで箱根へ

今回のロードバイク旅は、車で箱根へ向かうため、自転車の車載キャリア(サイクルキャリア)を使用した(車は編集部KOMATSUBARAの愛車「RANGE ROVER EVOQUE」)。朝の6時頃に出発し、8時には走り始めた。

自転車車載キャリアに積まれたロードバイク
自転車車載キャリアの固定部分1
自転車車載キャリアの固定部分2

「RANGE ROVER EVOQUE」に取り付けた「THULE」のサイクルキャリア。トップチューブをねじ式のグリップで、タイヤをバックル式のベルトで固定する仕組み

「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」のエントランス外観

全国に展開する「プリンスホテルグループ」の中でも最上級の宿泊サービスを提供する「ザ・プリンス」シリーズの一つ「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」が今回の拠点。宿泊者はチェックイン前から駐車場を利用できた

4.本格的なライドの前に「箱根神社」に参拝

今回のライドでは、「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」を出発し、湖畔沿いを南へ、元箱根エリアを通り、「大観山(だいかんやま)」へと向った。大観山は、箱根の南側に位置する標高1012mの山。箱根町と湯河原町の境界部分にあり、小田原からの湯河原を結ぶ「箱根ターンパク」や、自転車なら湯河原からの「椿ライン」からもアタックできるクライムポイントだ。

ホテルを出ると、湖畔沿いでありながらも意外と起伏のある道を南に走っていく。木々も豊かで、体に当たる風も気持ちいい。チラチラの木の間隠れする湖畔の風景は本当に穏やかで、心が洗われる気分になる。

途中、本格的なライドが始まる前に、まずは「箱根神社」に立ち寄り、旅(と言っても大した距離ではないが)の無事を祈願した。神社下にある食事処「権現からめもち」で「龍神まんじゅう」をほおばり、クライムに備えた。からさが癖になると噂の新名物「俺のうどん赤」がかなり気になったが、朝食をたっぷりと摂ったばかりだったため、口惜しながら次回に持ち越した。

箱根神社の境内
箱根神社境内への参道の階段
神社の駐車場付近にある神輿櫓
食事処「権現からめもち」の店内

箱根大神(ハコネノオオカミ)を祀る箱根神社は、箱根元宮、九頭竜神社箱根と共に「三社参り」が行われる有名な神社。交通安全・心願成就・開運厄除にご利益があるそうだ。

龍神あんぱんの写真
箱根神社境内への参道の階段
神社の駐車場付近にある神輿櫓
食事処「権現からめもち」の店内

箱根神社の「九頭竜伝説」の伝承にまつわる、龍神水でつくられた「龍神あんぱん」と、かしわの葉で巻かれた「あんこ餅」を堪能

5.箱根駅伝スタート&ゴール地点から登りが始まる

テレビでよく見る石碑に少し感動しながら、大観山へ遠回りで登り始める。箱根ミュージアムもある「箱根関所南」交差点を左折し、「椿ライン」にはいれば、そのまま大観山へ最短距離(5kmほど)で到着できる。しかしここは、箱根らしさを少しでも味わっておきたいと、「道の駅 箱根峠」を通ってから登ることにした。結論から言えば、遠回りする意味はあまりなかったが、道の駅からの芦ノ湖&箱根山の眺めはなかなかのものだった。

芦ノ湖畔から、大観山へは高低差250mちょっと、遠回りしても距離も7kmほどと、大した登りではない。平均斜度4%弱の道のりをがしがしと登っていく。が、気づくといつのまにかごっさんが千切れており姿が見えない。仕方なく「天閣台駐車場」にて待つことに。どうしたごっさん、まだまだ序盤だぞ。

箱根関所南の駅伝の石碑

登りが始まる「箱根関所南」の交差点に設置された駅伝の石碑。山側に走れば「椿ライン」でそのまま大観山へ。1号線沿いに進めば「箱根峠」を超えて三島へ通じる

「道の駅箱根峠」の外観

東海道の有名どころ「箱根峠」のてっぺん手前に位置する「道の駅 箱根峠」。ほとんど走っていないので、ここには写真だけ撮りそのままクライム続行

箱根関所南の駅伝の石碑

大観山展望台の1km手前に位置する「天閣台駐車場」。ここからも、芦ノ湖越しの富士山を望むことができるが、植物が生い茂っており、あまりひらけた景色とは言いづらい。大観山まで言ってから景色を見る方がオススメだ

6.意外とロードバイクは少なかった大観山頂上

大観山頂上部分には「大観山スカイラウンジ」があり、併設の「大観山展望台」からは、芦ノ湖ごしに富士山を望む、箱根を象徴するといっても過言ではない美しい景色を見ることができる。様々なwebサイトや、街のポスターなどでもよく見かける景色だ。箱根を回るならやはりここは外せない。とは言え、この日はあいにくの天候で、下の写真の通り、富士山はほぼ見えなかった。

また、休日にもかかわらず、ロードバイクは我々の他は大観山で1台、下りに1台しか出会わなかった。天候や、時間が昼前と若干遅めだったこともあるかもしれない。反対側の湯河原側から椿ラインを登る道のりだと、また少し異なっていたかもしれない。

大観山の標高標識1,011m

そもそも標高のある芦ノ湖から登ってきているので、大して登ってはいないが、それでも高地特有の涼しさや、空気の美しさを感じることができる

大観山スカイラウンジの外観
大観山スカイラウンジの内観
大観山スカイラウンジの内観
大観山スカイラウンジの内観
大観山スカイラウンジの「赤味噌ラーメン」
大観山スカイラウンジの「富士山マグマカレー」

六角形の平面を持つ「大観山スカイラウンジ」は2階建になっており、1階には地元の食材を使った料理を楽しめるレストランや、2階には大人の雰囲気あふれるティーラウンジも。ここでは「赤味噌ラーメン」と「フジヤママグマカレー」を堪能

大観山の標高標識1,011m

残念ながらこの日の天気は曇り、食事をとりながら晴れ間を待ったが、富士山は終始雲の向こう側に隠れてしまっていた

7.2つ目の目的地「大涌谷」へ再度クライム

大観山を後にして、一同は元箱根へ戻り、小涌谷・強羅方面へ。箱根山を周回するため、元箱根から再度もぼりが始まる。斜度も距離もそこまでなかったが、確実に足は削られる。しかも国道1号線の最高地点までいくとそこから小涌谷まで再度下りだ。つまりその分、後から登らなくてはならないと…。まだ前半なため、全員それなりに元気だが、この登っては下らされるのが精神的に効いてくる。

恩賜箱根公の入り口付近

行きは気付かなかったが、元箱根に戻る途中に「恩賜箱根公園」があり、そこには「自転車の駅」の看板が。工具や空気入れなどを無料で借りられるようだ

国道1号線の最高標高地点

元箱根から、強羅方面へむかう途中にある「国道1号線の最高標高地点」

小涌谷まで下ると「箱根小涌園ユネッサン」前のT字路にぶつかる。ここからだ…。ここから本当の箱根が始まる。

大涌谷までは6kmちょっと、平均斜度6.8%。特にユネッサン前からの500mほど続く斜度10%超えの激坂が一気に体力と足を奪っていく。そこからは、いつもの苦行だ。

しばらく登ると、硫黄の匂いがし始め、車道のすぐ目の前で白煙が上がっている箇所などに出会う。大涌谷の活発な噴気地帯だ(下写真3枚目)。温泉地らしくなってきた。特有の臭気に若干むせながら、登りを続ける。

大涌谷は観光名所だけあって、そこまでの道のりもしっかり整備されているものの、道幅はそこまで広いわけでもなく、土曜日だったこともあり、大涌谷手前は車の渋滞がひどかった。ゆるゆると牛歩のように進む車の横を、注意深く登っていった。

大観山の標高標識1,011m

道路脇の臭気地帯から立ち込める白いガス。大涌谷が火山であることを改めて実感する

8.サイクルウェアがいつも以上に浮いてしまう大涌谷

なぜだろうか。いつもなら慣れているはずだが、人々の視線がいつもより痛い気がした。普段ならピタピタのサイクルジャージを着ていようが、それがどんなアヴァンギャルドなデザインであろうが、見られることはあっても、もはやもう慣れたものだ。しかし、大涌谷ではいつもより確実に視線がキツかった。
おそらく箱根有数の観光地でかなり人も多いこと。そして、(おそらく皆車で登って来たであろう)ここまでの道のりが急坂だったことで、より奇異の目となって、降り注いだのではないだろうか。

そして大涌谷は寒かった。ライドを行った季節が、新年早々の冬真っ盛りということもあったが、なにより風がキツかった。山裾から吹きあげる強烈な風に、かいた汗が蒸発し、急激に体温を奪っていく。
そそくさと「大涌谷くろたまご館」に避難し、そしてなぜか寒いのに3人ともソフトクリームを買った。仕方ない。その場で買って食べることができる軽食がそのくらいだったのだから。

数度の登りと下りを繰り返し、結構キてる(特にモリスン)が、ひとまず大きな登りはなんとかクリアできたが、すでに這々の体と言わざるを得なかった。登りと下りの連続は、やはり精神的に堪える。3人はさらなる、体力の無駄な消耗を防ぐため、早めに風吹きすさぶ大涌谷を後にした。

余談だが、ここで売っている「温泉卵」もとい「くろたまご」は「浜名湖のたまご」を使っているらしい(下写真5枚目)。

大涌谷くろたまご館の外観

大涌谷にある「くろたまご館」。建物の中は人が多すぎてゆっくりとしか歩けないほど、大勢の観光客で賑わいを見せていた

大涌谷の火山性地すべりによる崩壊地形
大涌谷のたまごのモニュメント
販売されている「くろたまご」
浜名湖のたまごから作られるくろたまご
チョコソフトクリーム
ソフトクリームバニラ味

大涌谷は火山性地滑りでできた崩落地形を眺めることができる。自然の厳しさが作り出した険しい斜面は、火山性ガスが立ち込めまさに地獄のよう。ソフトクリームも絶品

9.高級ホテルで休息&翌日に駒ケ岳山頂へ

大涌谷から逃げるように(仙石原をすっ飛ばして)帰路についた。箱根湖畔まで降りてくると、あとはほぼ平坦と下りのみ。しかしここで事件が起こる。
湖畔沿いの道、ゴールまであと1kmにも満たない地点、緩やかな下りで僕が落車してしまった。大クラッシュである。特に何もない、カーブでもない場所で、歩道に突っ込み一回転した。フレームや駆動系は問題なかったが、前後輪のパンクとシフトレバーが明後日の方向を向いてしまった。ぐふぅ。距離も短かったし、駆動系は問題なかったのでそのままゆっくりと走行してゴールした。
ゴール後に気づいたが、ヘルメットの穴に直径1cmほどの枝が突き刺さっていた(なぜ写真を撮っておかなかったのか。それが唯一のこの度の後悔だ)。

話はいきなり戻るが、それだけこの「賽の河原」ルートにダメージを受けていた(という言い訳)のだと思う。登ッタカと思えば、下り、その分再度登らされる。どうせなら、箱根山をぐるっと、等高線常に道を作って欲しかった。

とはいえ、この起伏があるからこそ、豊かな自然を全身で感じ、感動的な風景に出会える、ということも事実だ。賽の河原もそうかもしれない。石を積んでは崩される、苦行に耐えながらも、そうやって徳を積み続けたからこそ、子供達は地蔵菩薩の救いをうけることができたのだ。
登り下りを繰り返す。苦しくとも。登る。また登る。その先にまだ見ぬ「救い」があると信じて。まさに、ロードバイクは賽の河原の石積みの如し。

それでもやはり、あえて言おう。「やっぱり平坦が大好きだ。」

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10.《おまけ》高級ホテルで休息&翌日に駒ケ岳山頂へ

大涌谷くろたまご館の外観

床の大理石、壁の石積み、絨毯、ひとつひとつに高級感漂う館内。流石は「ザ・プリンス」の名を冠するホテル

なだ万の朝食

ホテル内に入る有名料亭「なだ万」の朝食。我々では筆舌にするのもおこがましいほどの美味。昨日のダメージがみるみる回復していくかのよう

駒ケ岳山頂からの風景

駒ケ岳山頂から望む芦ノ湖。天候が良ければ右奥に富士山がそびえる絶景が。とはいえ、曇りのこの幻想的な風景も中々

駒ケ岳山頂の石積みエリア
駒ケ岳山頂の石積みエリア2

駒ケ岳山頂の石積みえりあで戯れるロードバイクジャーニー編集部メンバー

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