旅ログ

自転車&サイクリスト専用トレイン「B.B.BASE」に見るロードバイク旅の未来

JR東日本千葉支社が仕掛けたB.B.BASEという移動手段は自転車旅の未来を変えるのか。われわれ自転車乗りにとって関心の高い「自転車インフラ」としての取組にスポットを当ててみた。海外の自転車インフラとの比較なども交えながら、日本の自転車旅の最前線を掲載する。

コラム「BBBASE」のアイキャッチ画像
  1. 朝7時30分、両国駅から自転車旅へ出発
  2. 思った以上にテンションの上がる列車内
  3. 列車内空間は走ったことのない道につながっていた
  4. 自転車&サイクリスト専用トレイン「B.B.BASE」の可能性
  5. おまけ/小江戸 佐原の街並みPhoto

1.朝7時30分、両国駅から自転車旅へ出発

ホームに入る自転車&サイクリスト専用列車「B.B.BASE」
B.B.BASE参加の前日、RBJ編集部ではちょっとした議論があった。それは列車の出発駅である両国駅まで”輪行”するか”自走”するか、という問題だ。その時、いきなり本質的な課題にぶちあたった感じがした。その理由はこのB.B.BASEの売りは「自転車をばらさず、そのまま載せられる」という点にあるためだ。両国駅まで輪行した時点で、ばらしてしまう必要がある。メリットをしょっぱなから享受できなくなってしまうのだ。

B.B.BASEエリアマップ
両国駅とB.B.BASEの運行先の位置関係。佐原や銚子までならまだしも、外房の南側はなかなか足が伸ばしづらい距離だ

では、あえて我々の本拠地がある横浜から自走するかといえば、リスクが大きい。列車の出発時刻は7時30分と決まっている。距離にしておよそ25km。1時間半見ておけば、まあ余裕はあるがここで二点問題がある。朝が早すぎるという意見があがること(これは正直起きろよと)と、自走中にパンクでもしようものなら一気に一日の予定がパーになってしまう可能性があることだ。

前者はロード乗りの本気度にもよる(シリアスライダーがターゲットなのか?)が、後者に関してはいかんともしがたい。結局、我々は6時半出発で自転車をばらし、輪行することにした。いきなり、なんだかちょっと寂しい気分になってしまった。
これについては、出発地が両国駅から拡大していかないと、いかんともしがたい問題である。

というわけで、朝7時30分の出発に向けて6時30分の電車に乗って一向は出発。両国駅に着くと参加する人たちがすでに電車に乗せる準備を始めていた。やはり輪行している人もいくらかはいるようだった。

B.B.BASE集合風景
B.B.BASE乗車口への誘導サイン B.B.BASEの旗 集合ゲートへの導線
B.B.BASE専用乗車口までの誘導サインが、両国駅の西口から集合場所まで続いている
ロードバイクをホームに直接乗り入れる風景
車両の側面のロードバイクのデコレーション ロードバイク専用車両の発着ホームの駅名看板 自転車&サイクリスト専用列車「B.B.BASE」の側面
臨時車両専用のホームへ直接ロードバイクを乗り入れる作業に、新しい旅への期待値が高まる

自転車大国のオランダでは、在来線に自転車のピクトグラムが描かれた車両が2,3あり、自転車優先席なるものがあるとのことだ。

またロンドンでも郊外のOvergroundという在来線などでは、自転車をそのまま持ち込む風景が日常化しているという。都市部はかなり混雑が予想されるため現実的には難しいが、自転車で走りたい郊外で当たり前のように持ち込めるというだけで十分だ。

2.思った以上にテンションの上がる列車内

自転車&サイクリスト専用列車「B.B.BASE」内のフリースペース両国駅に到着し、いざB.B.BASEに乗り込んだ際には、結構テンションが上がった。正直最初はまあ自転車をのせるだけでしょと、半ばなめていたのだが、中の本格的な造りには少し驚かされた。専用の固定式バイクラックに加えて、複数人ライダーで乗車することを想定した4人掛けの向き合ったシート。行き帰りともに自然と自転車談義に会話が弾んだ。

自転車&サイクリスト専用列車「B.B.BASE」内の乗客用車両内部
自転車&サイクリスト専用列車「B.B.BASE」 指定座席の番号と自転車ラックの番号 自転車&サイクリスト専用列車「B.B.BASE」内の自転車ラック詳細部分
自転車&サイクリスト専用列車「B.B.BASE」の車椅子用の固定器具 自転車&サイクリスト専用列車「B.B.BASE」内の電源コンセント 自転車&サイクリスト専用列車「B.B.BASE」内のパウダーエリア
内装は専用車両にふさわしく、ロードバイク乗りが過ごしやすいよう細かな部分まで設計されている

ところで、どうして楽しく行き帰りを過ごすことができたのかを少し振り返ってみた。何が通常の自転車旅と違うのか。ポイントは「手ぶら感」にあったように思う。

輪行で旅行を楽しんでいる人は経験があるかもしれないが、輪行という行為は非常に不自由な状態なのだ。というのも、自転車を運ぶというのは思っている以上に周りに気を使う。どう考えてもピッタリジャージの野郎どもが何人かででかい荷物を抱えて、狭い電車内に入ってくるのだ。当事者の方が実は緊張していたりする(慣れてしまった人もいるだろうけど)。

その点、B.B.BASEは実に快適だった。まず自転車乗りしかいないため、上記のように周りの人に気兼ねすることなく乗車することができる。加えて、より大きなポイントとなっていたのは、自転車という大きな荷物の存在を意識せずにいられることだ。

複数人で輪行するとき、特に特急のような通路が狭い列車の場合、自転車の置き場所を見つけるのはとても難しい。B.B.BASEのように列車の中に自転車を置いておける場所が決められているだけで、列車内での”手ぶら感”を演出できたことが、「会話」が生まれた要因になっていた。

自転車&サイクリスト専用列車「B.B.BASE」内の座席部分
ゆったりと贅沢に設けられた座席スペース。開口部が広く都内の風景や千葉の田園風景を横目に会話が弾む

3.列車内空間は走ったことのない道につながっていた

佐原駅の外観と設置された自転車ラック
佐原駅の看板 佐原駅に到着した自転車&サイクリスト専用列車「B.B.BASE」 ロードバイク乗りたちを出迎える佐原の街の人々
佐原駅では現地の方々が出迎えてくれた。駅前のスペースには自転車ラックも

今回走った場所は、佐原コースという小江戸で有名な街をスタート地点としたコースだった。今回は、それなりに走れるメンバーで行ったため銚子漁港まで足を延ばした。

利根川沿いに伸びるサイクリングロードは都内だと荒川サイクリングロードを彷彿とさせたが、時折見える風車や、規模の大きい利根川ならではの開けた風景はなかなか都内で走ることができないコースだと言える。
ロードバイクで利根川の河川敷を走行する風景
銚子港とロードバイク

漁港で美味しい魚料理に舌鼓を打つのも、もちろん荒川では難しい。帰りの電車で話に出たのは、こういうところに日帰りで行けること自体がコンテンツになってるよなーという話だった。個人的にはアンケートにも書かせていただいたが、富士山方面にこんな移動手段があったらと思うと、おそらくチケットは取れないなとぼんやり思った。

居酒屋「銚子港 鮪蔵」の外観
「銚子港 鮪蔵」の海鮮丼 「銚子港 鮪蔵」の寿司 「銚子港 鮪蔵」の穴子丼
「銚子港 鮪蔵」の天ぷら 「銚子港 鮪蔵」のオリジナル料理 「銚子港 鮪蔵」のすまし汁
銚子港で水揚げされたばかりの鮮魚を堪能することができる「銚子港 鮪蔵」で昼食。現地の食べ物を堪能するのもロードバイク旅の醍醐味の一つ

4.自転車&サイクリスト専用トレイン「B.B.BASE」の可能性

今回の体験を通して、一点だけ気になった点があった。B.B.BASEのスタッフから、時間内に必ず戻ってくることを列車内で念押されていたのだが、折角はじめての土地なのだから、少しは遠出したいと思うのが自転車乗り的発想だ。レベルに応じて安全に時間内で走れるモデルコースをスタッフレベルから提案できるようになるということについては、B.B.BASEという「イベント」にとってはこれからの課題なのかもしれない。

B.B.BASEのサポートスタッフ
乗車クルーによるフリースペースでの車内販売。「旅感」が溢れるサービスだ

ただ、もしもB.B.BASEがイベントではなく、インフラとして日常に溶け込んだとしたなら、こんなことは思わなかったのではないかと思った。乗り遅れたとしてもそれはロード乗り側の自己責任になるし、コースだって自分たちで考えてしかるべきだから。

果たしてB.B.BASEの目指す先が、このまま「イベント感」を醸成していくべきなのか、より「インフラ」として自治体にとって集客の基礎とするべきなのかは、一自転車乗りとして一考の余地があるように感じた。

B.B.BASEという先進的な取り組みが成功した先に何があるのか。近年の自治体の取り組みは成功事例をいかに早く取り入れるかという方向性になっている。つまりは、我々自転車乗り達がB.B.BASEを成功体験にすることによって、全国の自治体が自転車インフラを整備していく可能性がある。その積み重ねによって、日本がちょっとだけ自転車大国に近づけるのではないかと、そんなことを思った。

B.B.BASEをただのイベントのままにしておくかどうかは、自分たち自転車乗り側次第なんじゃないかと思う。利根川沿い国道

5.おまけ/小江戸 佐原の街並み

ロードバイクで散策する佐原の街並み風景1

ロードバイクで散策する佐原の街並み風景2

ロードバイクで散策する佐原の街並み風景3

ロードバイクで散策する佐原の街並み風景4

ロードバイクで散策する佐原の街並み風景5

ロードバイクで散策する佐原の街並み風景6